アドグレイスは何故勝てたのか?
2015年6月15日
*末尾に入賞デッキリストあり
GPシャーロット2015にて「アドグレイス」というデッキが4位に入賞することなりました。それに伴ってかこのブログのリファラーを見ますと、「アドグレイス」という聞き慣れないデッキのことを調べるためアクセスも増えてきており、デッキへの関心も高まってきていることと思います。
今回「アドグレイス」が何故勝てたのかについて焦点を当ててみたいと思いましたが、そこから重点を少し移して「何故アドグレイスのこのリストで勝てたのか?」という点に主に言及していきたいと思います。正直なところ、何故今のメタゲームでこのデッキが入賞できたのか明快な説明がまだできません。「アドグレイス」同様、5位となった「《滋養の群れ》型グリセルシュート」もインスタントタイミングで一撃必殺が可能でかつピーキーなコンボデッキですが、何らかの理由でそのようなデッキが台頭しやすい素地があったのでしょうか?
話を元に戻し当該リストについて話を進めていきますが、今回のDarien Elderfieldの「アドグレイス」は《大霊堂の戦利品/Spoils of the Vault》[MRD] をメインボードに3枚据えた特殊な構成です。これまで1枚を補助的に使用するリストを見かけたことがありますが、3枚本格的に使用するリストは珍しいです。本人がインタビューにてMOも同様に《大霊堂の戦利品》入りアドグレイスを使用していたとコメントしておりましたが、数少ない「アドグレイス」使用者の中でも異彩を放つ存在です。なお海外の掲示板を見ていて《大霊堂の戦利品》を使用することに対する裏目について批判の声も上がっておりましたが、私も同様に今回のリストについてはやや否定的に捉えている部分もあります。そういった観点も踏まえ以下にリストの詳細について焦点を当てていきます。
▼《戦慄艦の浅瀬/Dreadship Reef》[TSP] の使用
本リストでは《神秘の指導/Mystical Teachings》[TSP] もフェッチランドも入っておらず、デッキに一切のシャッフル要素が排除してあります。
これは占術ランドの使用に効果的で、他のリストと比較して若干多めの計5枚の占術土地を使用しています。シャッフル要素を無くし占術ランドの効果を上げるまではよくある手法なのですが、土地関連で印象的なのが《戦慄艦の浅瀬》です。
もともと今回のメタゲームではトロンやジャンドが台頭し、トロンに対するジャンド側の回答として《大爆発の魔道士/Fulminator Mage》[MM2015] が多く使用されると前評判があったのではないかと思いますが、結果として巻き添え被害を被る多色のグリクシス系デッキが軒並み順位を落とし、結果としてTOP8内に2人のみ純正双子を送り込むことになった可能性があります。
誰もがこぞって《コラガンの命令/Kolaghan’s Command》[DTK] をデッキに投入している中で、実際には「《大爆発の魔道士》環境ではグリクシス双子と純正双子では純正が勝利した」と説明するのはあまりにわかりやすく真実味がないかもしれませんが、もしそれが正しい場合、今回の「アドグレイス」はフェッチランドを使用しておらず、基本土地の《平地》2枚以外はすべて特殊地形となり、メタゲームに逆行しているようです。またここでようやく《戦慄艦の浅瀬》の話になるのですが、「《大爆発の魔道士》環境」においては《戦慄艦の浅瀬》は単体で見てあまりにも脆弱です。おそらく一度貯蔵を行った後に破壊されるのではないかと思います。貯蔵しなければただの無色土地です。
追い打ちをかけるようですが、今回TOP8にトロンも精力の護符も見かけなかったのは、グリクシス/純正双子・デルバーサイドの《血染めの月/Blood Moon》[MMA] の影響もあるかもしれません。これは同様に特殊地形依存のデッキを咎めますが、今回のリストは《平地》二枚以外すべて特殊地形であり影響大です。当然のごとく《戦慄艦の浅瀬》は《山》になります。
とここまで《戦慄艦の浅瀬》がいかに環境的に厳しいかついて述べたものの、このリストにおいて《戦慄艦の浅瀬》の投入は合理的です。《大霊堂の戦利品》を考慮しますと、土地を出し過ぎる訳にいかず、《天使の嗜み/Angel’s Grace》[MMA] と同一ターンに使用するとき黒1マナが余計に必要となるためです。あまりに裏目があるように見えますが、勝ち上がっているということはその裏目以上に大聖堂の戦利品投入による突破力があったものと考えております。
▼《殺戮の契約/Slaughter Pact》[MMA] のサイドアウト
《殺戮の契約》をメインボードから抜いてしまうということは、つまりたまたま《呪文滑り》を入れたデッキとぶつかった場合、《稲妻の嵐/Lightning Storm》[CSP] を延々滑らされて手持ちの土地が足りなくなり勝利できない可能性が出てくるということです。準決勝はエルフカンパニーでしたが、カバレージでは《召喚の調べ/Chord of Calling》[M15] に《否定の契約/Pact of Negation》[MMA] を打っていました。ここで《召喚の調べ》が打ち消せない場合、メイン投入された《呪文滑り》が出てくる可能性がありました。《呪文滑り》以外でも《殺戮の契約》のサイドアウトにより親和や感染の3キル、双子コンボに対処しにくくなります。
ただこのサイドアウトも案外合理性があり、やはり《大聖堂の戦利品》によって追放される可能性を考えると1枚も入れないという選択があったのだと想像しています。他の一般的なリストでは《トレイリア西部/Tolaria West》[FUT] から《殺戮の契約》は元より《否定の契約》、《すべてを護るもの、母聖樹/Boseiju, Who Shelters All》[CHK] 、さらにはサイドの《トーモッドの墓所/Tormod’s Crypt》[M15] をサーチして裏目を無くす手法もありますが、その逆を行っています。今回の場合、2日目進出に親和・感染が多く双子も当然のようにおり、優勝したエルフカンパニーもいるのですから、《殺戮の契約》を抜くような構築がどこまでメタに対して妥当であったか謎ですが、ここでもやはり《大聖堂の戦利品》の突破力が裏目に勝ったのかもしれません。
カード2枚でここまで話が長くなってしまったのでここで切り上げますが、《戦慄艦の浅瀬》の使用と《殺戮の契約》のサイドアウトでよく上位に残れたものと思います。それくらい《大霊堂の戦利品》を手にしたアドグレイスに突破力があったのかもしれません。アドグレイスはインスタントで動くことが可能であり、上述の裏目を踏むことになりそうであれば、すぐさま動くことが可能です。
そもそも《大聖堂の戦利品》自体が裏目の塊のようなカードであり、そこさえ切り抜ければどんなデッキにも一撃で勝ててしまうことでしょう。今回おそらくは長丁場を乗りきれたのは、これまでのどこまでケアしても裏目が無くせないやや中途半端とも言えるアドグレイスの構築から脱却し、裏目を恐れない構築で突破力を身につけて次々一撃で相手を倒していったからなのではないかと想像しています。
Ad Nauseam Combo. Played by Darien Elderfield.
Grand Prix Charlotte 4th (Jun-2015)
GPシャーロット2015にて「アドグレイス」というデッキが4位に入賞することなりました。それに伴ってかこのブログのリファラーを見ますと、「アドグレイス」という聞き慣れないデッキのことを調べるためアクセスも増えてきており、デッキへの関心も高まってきていることと思います。
今回「アドグレイス」が何故勝てたのかについて焦点を当ててみたいと思いましたが、そこから重点を少し移して「何故アドグレイスのこのリストで勝てたのか?」という点に主に言及していきたいと思います。正直なところ、何故今のメタゲームでこのデッキが入賞できたのか明快な説明がまだできません。「アドグレイス」同様、5位となった「《滋養の群れ》型グリセルシュート」もインスタントタイミングで一撃必殺が可能でかつピーキーなコンボデッキですが、何らかの理由でそのようなデッキが台頭しやすい素地があったのでしょうか?
話を元に戻し当該リストについて話を進めていきますが、今回のDarien Elderfieldの「アドグレイス」は《大霊堂の戦利品/Spoils of the Vault》[MRD] をメインボードに3枚据えた特殊な構成です。これまで1枚を補助的に使用するリストを見かけたことがありますが、3枚本格的に使用するリストは珍しいです。本人がインタビューにてMOも同様に《大霊堂の戦利品》入りアドグレイスを使用していたとコメントしておりましたが、数少ない「アドグレイス」使用者の中でも異彩を放つ存在です。なお海外の掲示板を見ていて《大霊堂の戦利品》を使用することに対する裏目について批判の声も上がっておりましたが、私も同様に今回のリストについてはやや否定的に捉えている部分もあります。そういった観点も踏まえ以下にリストの詳細について焦点を当てていきます。
▼《戦慄艦の浅瀬/Dreadship Reef》[TSP] の使用
本リストでは《神秘の指導/Mystical Teachings》[TSP] もフェッチランドも入っておらず、デッキに一切のシャッフル要素が排除してあります。
これは占術ランドの使用に効果的で、他のリストと比較して若干多めの計5枚の占術土地を使用しています。シャッフル要素を無くし占術ランドの効果を上げるまではよくある手法なのですが、土地関連で印象的なのが《戦慄艦の浅瀬》です。
もともと今回のメタゲームではトロンやジャンドが台頭し、トロンに対するジャンド側の回答として《大爆発の魔道士/Fulminator Mage》[MM2015] が多く使用されると前評判があったのではないかと思いますが、結果として巻き添え被害を被る多色のグリクシス系デッキが軒並み順位を落とし、結果としてTOP8内に2人のみ純正双子を送り込むことになった可能性があります。
誰もがこぞって《コラガンの命令/Kolaghan’s Command》[DTK] をデッキに投入している中で、実際には「《大爆発の魔道士》環境ではグリクシス双子と純正双子では純正が勝利した」と説明するのはあまりにわかりやすく真実味がないかもしれませんが、もしそれが正しい場合、今回の「アドグレイス」はフェッチランドを使用しておらず、基本土地の《平地》2枚以外はすべて特殊地形となり、メタゲームに逆行しているようです。またここでようやく《戦慄艦の浅瀬》の話になるのですが、「《大爆発の魔道士》環境」においては《戦慄艦の浅瀬》は単体で見てあまりにも脆弱です。おそらく一度貯蔵を行った後に破壊されるのではないかと思います。貯蔵しなければただの無色土地です。
追い打ちをかけるようですが、今回TOP8にトロンも精力の護符も見かけなかったのは、グリクシス/純正双子・デルバーサイドの《血染めの月/Blood Moon》[MMA] の影響もあるかもしれません。これは同様に特殊地形依存のデッキを咎めますが、今回のリストは《平地》二枚以外すべて特殊地形であり影響大です。当然のごとく《戦慄艦の浅瀬》は《山》になります。
とここまで《戦慄艦の浅瀬》がいかに環境的に厳しいかついて述べたものの、このリストにおいて《戦慄艦の浅瀬》の投入は合理的です。《大霊堂の戦利品》を考慮しますと、土地を出し過ぎる訳にいかず、《天使の嗜み/Angel’s Grace》[MMA] と同一ターンに使用するとき黒1マナが余計に必要となるためです。あまりに裏目があるように見えますが、勝ち上がっているということはその裏目以上に大聖堂の戦利品投入による突破力があったものと考えております。
▼《殺戮の契約/Slaughter Pact》[MMA] のサイドアウト
《殺戮の契約》をメインボードから抜いてしまうということは、つまりたまたま《呪文滑り》を入れたデッキとぶつかった場合、《稲妻の嵐/Lightning Storm》[CSP] を延々滑らされて手持ちの土地が足りなくなり勝利できない可能性が出てくるということです。準決勝はエルフカンパニーでしたが、カバレージでは《召喚の調べ/Chord of Calling》[M15] に《否定の契約/Pact of Negation》[MMA] を打っていました。ここで《召喚の調べ》が打ち消せない場合、メイン投入された《呪文滑り》が出てくる可能性がありました。《呪文滑り》以外でも《殺戮の契約》のサイドアウトにより親和や感染の3キル、双子コンボに対処しにくくなります。
ただこのサイドアウトも案外合理性があり、やはり《大聖堂の戦利品》によって追放される可能性を考えると1枚も入れないという選択があったのだと想像しています。他の一般的なリストでは《トレイリア西部/Tolaria West》[FUT] から《殺戮の契約》は元より《否定の契約》、《すべてを護るもの、母聖樹/Boseiju, Who Shelters All》[CHK] 、さらにはサイドの《トーモッドの墓所/Tormod’s Crypt》[M15] をサーチして裏目を無くす手法もありますが、その逆を行っています。今回の場合、2日目進出に親和・感染が多く双子も当然のようにおり、優勝したエルフカンパニーもいるのですから、《殺戮の契約》を抜くような構築がどこまでメタに対して妥当であったか謎ですが、ここでもやはり《大聖堂の戦利品》の突破力が裏目に勝ったのかもしれません。
カード2枚でここまで話が長くなってしまったのでここで切り上げますが、《戦慄艦の浅瀬》の使用と《殺戮の契約》のサイドアウトでよく上位に残れたものと思います。それくらい《大霊堂の戦利品》を手にしたアドグレイスに突破力があったのかもしれません。アドグレイスはインスタントで動くことが可能であり、上述の裏目を踏むことになりそうであれば、すぐさま動くことが可能です。
そもそも《大聖堂の戦利品》自体が裏目の塊のようなカードであり、そこさえ切り抜ければどんなデッキにも一撃で勝ててしまうことでしょう。今回おそらくは長丁場を乗りきれたのは、これまでのどこまでケアしても裏目が無くせないやや中途半端とも言えるアドグレイスの構築から脱却し、裏目を恐れない構築で突破力を身につけて次々一撃で相手を倒していったからなのではないかと想像しています。
Ad Nauseam Combo. Played by Darien Elderfield.
Grand Prix Charlotte 4th (Jun-2015)
Maindeck (60)
Creature [4]
4 Simian Spirit Guide
Artifact [8]
4 Lotus Bloom
4 Pentad Prism
Instant [16]
2 Lightning Storm
3 Spoils of the Vault
3 Pact of Negation
4 Angel’s Grace
4 Ad Nauseam
Sorcery [8]
4 Sleight of Hand
4 Serum Visions
Enchantment [3]
3 Phyrexian Unlife
Land [21]
2 Plains
4 Seachrome Coast
4 Temple of Deceit
2 Dreadship Reef
4 Darkslick Shores
4 Gemstone Mine
1 Temple of Enlightenment
1 Laboratory Maniac
4 Leyline of Sanctity
2 Esper Charm
1 Slaughter Pact
3 Darkness
1 Patrician’s Scorn
1 Repeal
1 Gigadrowse
1 Pact of Negation
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